Kohei SOGA, Ph. D.

 Kohei SOGA, Ph. D. [ English ]
東京理科大学 基礎工学部
材料工学科  教授
東京理科大学 先進工学部
マテリアル創成工学科 (2021~)
博士(工学)曽我 公平

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アメニティーとマテリアル Human Amenity and Materials (HAM)
 
アメニティと日本の産業:高度成長期に生まれた筆者の幼少時代にはすでにその存在は首位の座を譲っていたのですが、誰もが知っている「ブリキのおもちゃ」はかつて日本の主力輸出製品だったそうです。そして現在、アニメーションやゲームなどのエンターテイメントに関わる製品の開発において、日本が世界をリードしていることは良く話題になります。これらの産業は総称してアメニティー産業と呼ぶことができ、日本人はアメニティー産業において優れた「勘」を備えていることを歴史は物語ります。私はアメリカに旅行する機会が多いのですが、お土産として人気があるのは、コアラのマーチなどのかわいいお菓子、ベイブレード、ポケモングッズなどであり、これはすべて人が「喜ぶ」効果を持つものです。

マテリアルと日本の産業:現代の日本の産業において物質・材料という意味での「マテリアル」の製造が中核的存在であり、それがこれまでに「学」と「産」の連携において培われて来たことは、例えば鉄鋼業界と大学の連携において良質安価な鉄の生産において日本が世界一の地位を占めるに至った経緯などを例にとると容易に見てとることができます。また現在ナノテクノロジーと呼ばれている分野で日本が国際的な競争力を維持している背景には、鉄をはじめとする金属の生産に伴って培われた材料化学や、戦後急成長することにより高度成長経済を支えた化学繊維の生産と共に発展を遂げたポリマーサイエンスのベースがあります。では、勤勉であること以外にこれらの産業の成長を支えた「日本人の特徴」は何なのか?この疑問への一つの答えは現場で生産に携わっている人々の「勘」であると言えます。この「勘」と呼ばれるものは一朝一夕に形成可能なものではなく、特定の風土と社会が育てた長い歴史の中で自然(じねん)と私たち日本人のなかに備わってきたと考えるべきものでしょう。日本人が最高品質のマテリアルを作る勘を備えた国民であることは、一つの有名な例として日本刀に見ることができます。日本刀に用いられている鋼(はがね)の品質は、現在のもっとも高度なテクノロジーの元に得られる最高品質の鋼にまったく引けをとりません。その製造技術は勘と経験のなかから生み出された「たたら」と呼ばれる日本人が編み出したオリジナルな方法です。歴史に学ぶならば、私たち繊細な感覚を持つ日本人が高品質の「マテリアル」を作り出す「勘」を備えた国民であることは疑う余地がありません。

アメニティとマテリアル:さて、「アメニティ」という言葉を少し掘り下げてみると「人間の五感」を通して入ってくる刺激をとらえて「心が喜ぶ」ことであると考えることができます。上記に記した日本人が「勘」を備えて国際的な競争力を持てる二つのキーワード、「アメニティ」と「マテリアル」の関わりについて考えて見ましょう。私たちは物質と材料の総称である「マテリアル」から「五感」を通して多くの刺激を受け、その刺激は「心」に働きかけます。「もの」を作ることに携わる人たちはこの関わりを親身に考え、感じています。ここでいう「もの」というのは最終製品に近い状態のものであり、マテリアルはその前段階の材料です。この構図のなかでアメニティーとマテリアルがもともと深い関わりを持っていることは明らかなのですが、多くの場合にその関わりを親身に感じているのは「もの」を作る側の人々であり、「マテリアル」の、少なくとも大学で研究をしている者にとってはあまり馴染みのない関わりなのです。これまでにアメニティーとマテリアルの関係をマテリアルの専門家の側から統括的に研究し論じてきた例は希少で、この関わりは「もの」を作る現場に分散的に存在してきた問題なのです。私はマテリアルの専門家としてこの「アメニティーとマテリアル」の関係が次の三つの重要性を秘めていると考えています。その一つの意味は、「もの」の専門家からのマテリアルへの種々の新しい要請があるのと同様に、マテリアルの専門家からの新しい「もの」の創生が可能であり、その「もの」が生み出す新たな産業において「アメニティーとマテリアル」の関わりが、日本人の「勘」をフルに生かすための重要なスループットになるということです。もう一つの重要性は、大学の材料工学を専門とする分野での教育における重要性です。大学の材料工学は、高度に専門的なマテリアルの科学であるという考え方からその科学そのものの発展とそのための人材育成に重点が置かれてきたわけですが、大学教育のもう一つの役割は明らかに「産業界の求める人材」の輩出であり、マテリアルの専門的な知識を持ち、商品開発から売込みへのマネージメントのできる人材の重要性は今さらここで強調するまでもありません。大学において「アメニティーとマテリアル」の関わりを学生と共に研究する意義はそのような「産業界の欲する人材の大学からの輩出」の鍵になると考えられます。第三の重要性は、この研究が種々の異なる専門分野や立場の人々の専門の融合によって新たな研究領域を作り出すという点です。この研究はマテリアルの専門家だけでは不可能で、むしろマテリアルの専門家が「もの」を作ったり使ったりしている方々から考え方や感じ方を語っていただくところから始まると考えています。従ってこの研究には超領域的な人材の参加が不可欠で、様々なカラーの人々のタイアップが新しい色を生み出してゆく営みなのです。

そんなわけで、私は「アメニティーとマテリアル」の研究をはじめようとしています。少しでも興味をもたれた方はお気軽にメールをいただければと思います。